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非上場株式の相続税評価における総則6項の適用が違法と判断

非上場株式の相続税評価における総則6項の適用が違法と判断

【財産評価関係】

2024年10月15日付のTAXニュースで既報の通り、東京高裁は令和6年8月28日の控訴審判決において、財産評価基本通達6項(総則6項)の適用要件を満たさないと判示し、国の控訴を棄却しました。この判決の原審である東京地裁の令和6年1月18日判決文が公開され、経緯と判断内容が明らかになりました。

判決の背景

本件は、薬局チェーンを展開するA社のオーナー経営者である甲が、同業のB社とA社株式の売却協議を進めていた最中に死亡したことに端を発します。甲の妻が交渉を引き継ぎ、A社株式は1株約10万円でB社に売却されることが決定しました。

一方、相続税の申告では、A社株式の評価方法として類似業種比準価額方式を採用し、1株約8,000円と評価しました。しかし、課税庁は財産評価基本通達6項を適用し、1株約8万円という10倍の評価額を基に更正処分を行いました。相続人らはこれに不服を申し立て、裁判に至りました。

東京地裁の判断

判決文によれば、課税庁は「相続開始時点で株式の客観的な交換価格が明らかである場合、通達評価額を採用することは租税負担の公平性に反する」と主張しました。しかし、東京地裁は以下の点を指摘しました:

  1. 租税回避の意図は認められない
    • 甲及び相続人が、租税回避の目的で株式売却を行った形跡はない。
    • 売却価格が通達評価額より高額であったこと自体に不当性はない。
  2. 通達評価によるべき特別な事情はない
    • 甲の死亡後に成立した売却価格は、相続開始時点での客観的な市場価格に基づくものであり、通達評価額よりも現実的な価値を反映している。

その結果、東京地裁は国側の主張を斥け、課税庁による総則6項の適用を違法と判断しました。

コメント 

今回の判決は、非上場株式の相続税評価における財産評価基本通達6項(総則6項)の適用範囲を厳格に捉えた点で、非常に納得のいくものです。特に、相続開始時点での売却価格という客観的な交換価格が明らかである場合に、租税回避の意図がないことを裁判所が明確に認めたことは重要です。

また、課税庁が通達評価額を10倍に引き上げたことに対して、「租税負担の公平性」という主張が斥けられた点も合理的だと思います。今回のケースでは、相続人が現実的な売却価格で評価を申告しており、その価格が市場の実態を反映していた以上、通達評価額を強引に適用するのは不合理と言わざるを得ません。

この判決は、非上場株式の評価において、実態に即した評価がいかに重要かを改めて示しています。今後も、課税庁による通達の柔軟かつ公平な運用が求められるでしょう。

 

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